故郷の雪

季節がうつろいでいきます。

春夏秋冬。

私は冬が好きです。

それは最近気付きました。

地元の東北にいる時は気付かなかった冬の良さが今はよく分かります。

冬の寒さに耐えた桜が春、美しく咲き誇るように、私たちは厳しい冬を耐えて成長するのです。

名古屋の冬は厳しくはありません。

でも東北の冬よりなんだか辛い気がします。

ただ、冬に向かう秋はたまらなく好きです。

日々涼しく、日々寒くなる時期が、冬の準備期間です。

吐く息が白くなると冬が来たことを実感します。

東北にいる時は雪が嫌いでした。

今は恋しいです。

真っ白な雪原を、誰も踏みしめていない雪の上をさくさく歩くと、まるで地球上には自分しかいないのではないかと錯覚します。

雪が積もると、すべての音を遮断してくれる気がするのです。

静かな静かな空間に、自分の心臓の音が小さく響きます。

厳しくも美しい景色がそこには広がっています。

目を閉じれば故郷の山を思い描くことができます。

どんな山より美しいです。

いつかまた故郷に住むことがあってもなくても私の故郷はひとつです。

だから、ずっと心の中に故郷を思い描くことができるのです。