故郷の雪

季節がうつろいでいきます。

春夏秋冬。

私は冬が好きです。

それは最近気付きました。

地元の東北にいる時は気付かなかった冬の良さが今はよく分かります。

冬の寒さに耐えた桜が春、美しく咲き誇るように、私たちは厳しい冬を耐えて成長するのです。

名古屋の冬は厳しくはありません。

でも東北の冬よりなんだか辛い気がします。

ただ、冬に向かう秋はたまらなく好きです。

日々涼しく、日々寒くなる時期が、冬の準備期間です。

吐く息が白くなると冬が来たことを実感します。

東北にいる時は雪が嫌いでした。

今は恋しいです。

真っ白な雪原を、誰も踏みしめていない雪の上をさくさく歩くと、まるで地球上には自分しかいないのではないかと錯覚します。

雪が積もると、すべての音を遮断してくれる気がするのです。

静かな静かな空間に、自分の心臓の音が小さく響きます。

厳しくも美しい景色がそこには広がっています。

目を閉じれば故郷の山を思い描くことができます。

どんな山より美しいです。

いつかまた故郷に住むことがあってもなくても私の故郷はひとつです。

だから、ずっと心の中に故郷を思い描くことができるのです。

春夏秋冬

季節の移り変わりで体調が悪くなります。

春や、秋の季節が変わる時は気温の変化に身体が付いていきません。

なんとなく低迷していたり、なんとなく不調なのは季節のせいだと最近気付きました。

暑いから寒いへ、寒いから暑いへの変化が私には難しいのですね。

でも私は、寒い寒い冬から夏へ向かう春が、うだるような暑さから解放される秋が、大好きです。

白い息が出なくなる季節は、植物が芽吹き、春を喜ぶ季節です。

手袋やコートを脱ぎ捨てた時の喜びはなにものにも変え難いです。

桜が、寒く厳しい冬を乗り越え、美しい花を咲かせるように、春には私も何か希望が見えてくるのです。

春生まれの私は、新しい歳の始まりに、今年は沢山良い事があると良いなと願うのです。

そして、秋も大好きで、うだるような暑さから開放された涼しさが大好きです。

夜は鈴虫の声が子守唄になります。

長い長い夜をこえ、冬に向かい、暖かい防寒着を着る季節も大好きです。

東北生まれの私はやはり、夏より冬が好きなのかもしれません。

辛く厳しい寒さは毛嫌いされがちですが、雪が降った大地は美しく雄大で、世界に自分ひとりだけのような不思議な感覚になります。

しん、と静まり返った白銀の大地が大好きです。

時々故郷に帰りたいと思います。

故郷の山を見たい、強く思うのです。

今は空が狭く感じます。

広く雄大な、山々を感じたい。

名古屋に来て5年、今更ホームシックでしょうか。

故郷の春夏秋冬をまたこの目で見れるでしょうか。