恐怖心

物心ついてから、私がはじめて恐怖心を抱いたのはレンタルビデオ屋でした。

父と母は、映画が大好きでよくレンタルビデオ屋に連れて行ってもらっていました。

ただ、何とも言えないあの店内の匂いと、ホラービデオのジャケットが目につき、幼い私には、とてつもない恐怖だったのです。

今思えば、それは恐怖症だったのかもしれません。

世の中には様々な恐怖症があります。

それが私にはレンタルビデオ屋でした。

レンタルビデオ屋に行く時は周りを見たくなくて、いつも俯いていました。

もう、レンタルビデオ屋なんてありませんが、私が映画をあまり見ないのにはその恐怖症も関係しているのかもしれません。

恐怖症の引き金は何になるかなんて、誰にも分かりません。

今でも数少ない、レンタルDVD屋などには行きたくないです。

見なければ良いのに、見たくないものばかり目に入るのです。

そういえば、虫嫌いな私は、家族の誰よりも家の中にいる虫を発見するのが早いです。

苦手なものや恐怖は1度頭にインプットされると、なかなか出ていってはくれません。

何か楽しいことを考えても恐怖が勝つのです。

私のそんな恐怖を和らげてくれるのは実際に目の前にある、美味しいものや綺麗なものです。

恐怖は想像でしかありませんが、目の前のものは現実です。

目の保養をしているうちに、恐怖は遠のきます。

ただ、消えた訳ではないので、また何かのきっかけですぐ近くに来るのです。

迷惑な客ですね。

強迫性障害と同じです。

私たちは付かず離れず、適度な距離で歩いています。

時々は遠くに行ったり、近くに来たりを繰り返して。

決して消えたわけではない。

見えなくともその存在は確かにあります。

強迫性障害から派生する数々の恐怖と私はこれからも戦って行くのです。